2010年1月6日水曜日
「そうするしかない」
ふとしたことで、石井ゆかりさんが劇作家の阿藤智恵さんをインタビューした文章を読んだ。
そのなかの阿藤さんの語ったことばの一節にどきりとした。
役者というのは、上手か下手かではない、とそのとき思ったんです。
どんなに辛くても、疲れていても、舞台の上でお客さんを前にすると、
そこでどんどんチャージできるのが、役者なんです。
舞台があってお客さんがいる、というそのシチュエーションで光合成できる人、
というのがいて、それは私とは民族が違うんだ、種族が違うんだ、と思ったんです。
それを受けて、石井さんは自分の仕事に想いをはせていて、それがまた洞察にすぐれていてすごく面白いのだけれど、何よりこの部分に「こたえ」があったように感じました。
わたしが舞台を降りた理由もそんなところにあるような気がして。
わたしは物心ついたころから、舞台の作品を作り上げる生身の人間の真実が知りたくて、それを調べたくて今まで来ていて、それはシンプルにすれば、人間ってどんなものか知りたい、という好奇心に支配されているようなものです。
だから、演じる人間の舞台での真実が知りたくて体験するために舞台に立っていたけれど、それがある程度わかったら、舞台そのものにはあまり興味がなくなって、そこに立つ生身の人間がどうしたらより魅力的で活きてくるのか、そっちの方に意識が移ってしまった。
それで、わたしはアレクサンダー・テクニークの道に進んで、未知にたくさん出会いながらここまできちゃったわけですが、たしかに、これ以外しようがなかった、と言わざるを得ません。
みんな「そうするしかない」人なのであって、他のことは、できそうでもできないのだ。
という石井さんのことばは言いえている。
「そうするしかない」自分を受けとめて、それを楽しんでいく生き方をしていかれたら。
きっとシンプルで面白くて奥深いのだろうな、と思いました。